Indoor Eats: バナナスプリットとベッドについて
30年前のレストランをレビューした本と、現代の同じレストランのレビューを比べる記事を最近読んだ。30年間も激しい入れ替わりのマンハッタンを生き延びてきたレストランばかりなので、社会的変化や、フードレビューのスタイル変化、また具体的なニューヨーカーのテイストの変化を視察するような、感慨深い記事になるポテンシャルがあったものの、実際に読んでみると、インフレにちょっと触れるだけでたいして面白くなく、残念に思った。昔だったら Minetta Tavern で蛙の足が食べられたとか(1937年にオープンしたミネッタ・タヴァーンは、グリニッチヴィレッジのグルメ文化の柱とも言える)、ミートパッキングのステーキハウス Old Homestead のデザートメニューにフルーツ Jell-O (懐かしい!)があったこととか、それについてもっともっと面白いことが書けるのに!ウェストヴィレッジのニュー・アメリカン風レストラン、One If By Land, Two If By Sea の有名なビーフウェリングトンが現在は8ドルも高くなっている、なんて教えてもらっても、そりゃそうだ、としか反応できない。
マンハッタンのレストラン業界で何が起きているかはさておき、30年間アメリカ人に愛され続けたであろう手作りデザートを久しぶりに食べた。というよりも、初めてれっきとした作り方を教わった。そう、「昔」の香りがほんのりするバナナ・スプリットである。ダイナーやあまり高くないレストランのメニューでたまに見る。要はミルクセーキちっくなグラスではなく、お皿に乗ったバナナ・パフェである。イメージとしては、ミントグリーンと白のチェック模様のテーブルクロスを広げ、10歳の妹と一緒に食べる感じ。(妹はいないけど、イメージ。)
昨日の夜、彼氏が「サプライズがあるから」と言い残し、20分ほど家から消えた。お皿を洗ったりラジオを聴いたりしていると、角のスーパーから何かを買ってきたようだが、袋の中身は見せてくれない。あと一時間したらサプライズの時間。らしい。(しかし本当にサプライズが好きな人である)
一時間というのはアイスとホイップクリームをしっかり冷やす時間だったらしい。大きめのバナナを2本縦に切り(スプリットする)、深い皿に敷く。実はバナナをスパスパ切るだけだから必要ないけれど、デビューさせたくてしょうがなく、先日買ったカラフルで可愛い paring knife を登場させる。ピーラーもなんとなく登場。
その上に、大きなボール状にチョコレートかバニラアイス(バニラチョコレートという手もある)を乗せる。さらにその上に砕いたピーナッツをぱらぱらかけ、M&Mやスプリンクルなどでトッピングし、チョコレートシロップ。仕上げにホイップクリームをたっぷり乗せ、またチョコレートシロップ。ハーシーズがやはり一番美味しいし使いやすい。お飾りにマラスキーノチェリー。
山のようなバナナ・スプリットをベッドに持ち込む。(これでこそ子供らしいバナナ・スプリットの食べ方。)じめじめした暑い夜の中、みるみる溶けていくアイスを頬張り、テレビを見る。なんだか子供時代のノスタルジアを呼び起こすのと、一週間の仕事&パーティーの疲れを癒すのと、時間的過去と現在を結びつけるバナナ・スプリットの働き。
30年前の土曜の夜、El Faro に出かけたらタパスなんて無かったかもしれないけれど、マラスキーノチェリーとホイップクリームとバナナとアイスで熱帯夜をやり過ごしていたのは、子供に限らず、多くの恋人がマンハッタン中にいたのでは。フォーシーズンズに32ドルするスモークサーモンを食べに行くよりも、ベッドの中で冷たいデザートを食べるほうがよっぽど満足できる夏の夜の過ごし方である。
by girlfrombackthen
| 2009-07-27 08:42
| The Gourmand