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Night Owl: ニューヨークのナイトライフにおける禁酒法時代の名残

暑い。

昨夜は、久しぶりにローワーイーストサイドのブルーム・ストリートとフォルサイス・ストリートにある、Happy Ending というダンスクラブに女友達4人と出かけたのだが、ここの面白いところは、昔は中国人が経営するマッサージパーラーだったらしい。店頭はそのまま中国語の看板で、外に座っている大きな黒人のバウンサーと、喫煙者のために設置されたベロアのロープのみがダンスクラブがこの奥にあるよというヒント。音楽は抜群だが(昨日のDJは特に良かったような気がする)結局のところ、このマッサージパーラー店頭の怪しさ、ちょっとやそっとじゃ分からないところ、それが売りなのだ。

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ハッピーエンディングは知ってる人ならすんなり入れるので、「スピークイージー」まではいかないが、最近また流行りだしたのが秘密のコードがないと入れない店とか、隠れたところにあるクラブやバー。スピークイージーとは1920年代、禁酒法時代のアメリカで盛んだった秘密のバーやジャズハウスから来た言葉であるが(Please Don't Tell (PDT) 「言わないで」という風にも知られている)、今日のニューヨークのスピークイージーはもう少しキッチュな要素がある。

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たとえば、人通りの多いセントマークスにある、外に eat me と黄色い文字で書かれた大きなホットドッグ形の看板がぶら下がっている、一見、ごく普通のホットドッグ屋さん、クリフ・ドッグ。階段を下りて店に入っていくと、レジの後ろには、セントマークス通りっぽいピアスだらけの女性店員。確かに2ドルのホットドッグを頬張っているおじさんが3人うるさく喋っていたり、意外とカッコイイ学生が何故か一人でチリ・チーズ・フライをカウンター席で食べていたりするのだが、週末の夜に訪れると、大概、目が痛くなるほどピカピカしたシャツを着た女性と如何にもヒップスターな若い兄ちゃんみたいなのが、ホットドッグを注文することなく、店内をうろうろしている。初めて、おなかを空かせて友達と何人かでクリフ・ドッグに行ったとき、レジに向かおうとすると、ピカピカしたやつを着ているどうやら疲れ気味のおねーさんに、「期待しないほうがいいわよ。私たちなんかもう1時間半も待っているの」と言われて「は?」と思った記憶がある。何をぼやいているんだろう、ホットドッグなんかすぐに出てくるじゃない。すると、「あらやだ、ホットドッグを買ったの」と今度は見下した態度で話しかけてくるので、何なんだこの人たちは、邪魔だなあ、なんて思っていたのだが、ようやく分かった。このホットドッグ屋はスピークイージーのバーに繋がっているのだと。

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スピークイージー通の友達の話によると、木曜日の午後3時だか4時だかよく覚えていないが、ある時間にクリフ・ドッグに行き、店内にある電話ボックスの中に掲示されている番号をかけて予約を入れると、その週末に電話ボックスの隣にあるドアから秘密のカクテルバーに入れるそうだ。じゃあ店内で待ちぼうけのピカピカしたやつを着ている人たちは何故入れないのと聞くと、場合によってはバーが一杯で入れなかったり、ホットドッグ屋の中にバーがあるとどこからか聞きつけて、予約せずに来た人たちが1、2時間も待っているらしい。ふ~ん、の世界である。そんなにしてまで、暑くて揚げ物臭いホットドッグ屋に繋がってるバーだかクラブに入りたいものかね。

やはり禁酒法時代の名残といっても、「法律の目をくぐり、飲んで、音楽を楽しんで、踊り明かそう」じゃなくて、「セレクトな人しか入れないスピークイージーに行ったことを友達に自慢しよう」という動機がそこにはある。要は、どれだけ自分がクールかをアピールする鍵なのだ。ああ、ニューヨークだなぁ。しかし、こういったスピークイージーは昔から密かに賑わっているスピークイージーもあれば、毎晩のように新しいヴェニューがキノコごとく相次いで現れるのがニューヨークの街。そう、スピークイージーにはシステム上の欠陥があるのだ。秘密を知られてしまうと、ホットドッグ屋の後ろや、中国語のマッサージパーラーを装った建物に隠されている魔法が全て消えてしまうのだ。Hell’s Kitchen の某バーの奥にはトランスミュージックばかり流している喫煙OKのクラブがあるし、ダウンタウンの某バーでは煙草どころか大麻が許されている(噂ね)。でも秘密が広まれば広まるほど、価値が下がってしまうのがスピークイージーの悲しい運命。Woodson and Ford 、Cabin Down Below 、Raines Law Room 、Milk & Honeyのスピークイージーはすでにツマラナイとされているし。先日、某雑誌のリストサーヴから送られてきたメールには、なんたらかんたらのメールリストにのると「中華街のギャングが本部に使っていた、薬局テーマのスピークイージーを紹介」なんて書いてある。薬局テーマって何だろうと真剣に考える。やっぱりニューヨーカーは目新しいものが好きなのね。

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ハッピーエンディングの夜は深夜4時に終了。皆イーストヴィレッジかアルファベットシティに住んでいるので、タクシー2台に分かれて帰宅。友人二人がおなかが減って死にそうと言うので、仕方がなく途中で14th & 1st の有名なピザ屋、 Artichoke に寄るが、行列がとんでもないので諦める。アーティチョークとチーズだけのピザが人気商品。スライス一枚、4ドルは高いと感じるかもしれないが、巨大なスライスなので、私はいつも終わらせられない。

帰り道、もう鳥が囀っている。踊りすぎて筋肉痛で、昼ごろに目覚める。普段はあまりクラブとか好まないので(どちらかというとジャズハウスでワインをおとなしく飲みたい派)、たま~にダンスではしごの週末があると翌日は役立たずになってしまう。

仲間がまだ卒論や期末試験で苦しんでいるときに、私一人だけ殆どの作業が終わってしまい、なんだか急に夏みたいな天気だし、ぐーたら過ごしてしまう時間が増えた。国連に行かない日は、Oの仕事のお供をして秘書的なことをして手伝ったりしているが、もっと有効的に時間を使いたいものである。目が回るほど忙しかった時期は、ああチェルシーでアートギャラリー・ホッピングしたい(木・金・土を狙っていくと、オープニングに当たる確率も上がり、シャンパンやワインを啜りながらアート関係の人とギャラリーを回れたりする。いえもちろん、シャンパン目当てにアートを見に行くわけではありませんが。)とか、ソルボンヌから招かれてニューヨーク大学でレクチャーをするナンとか教授を聴きに行きたいとか、今夜はウィリアムスバーグにあのインディー系バンドが来るのに行けないーとか、やりたいことが一杯あったのに。最近は少しでも時間があれば、ただゆっくりしたいという日が多い。歳を取った、なんて言ったら年上のOに怒られるけど、本当にそう思う。1年生のときは平気で徹夜通しで勉強したあと平気で映画を観にいったり、徹夜通しで遊んでも翌日の授業は時間厳守でちゃんと出たりしてたのに、今年はどうもエネルギーがない。不幸な完璧主義が故に、寝不足の生活には慣れているが、一週間のうちに失った睡眠時間を補うのに週末はカフェにずっと座ってたり、誰かの家でごろごろ過ごしてばかり。ぶつぶつ。どうしちゃったのかしら。

なので、夜を踊り明かしたのは本当に久しぶりだった。しかし昼夜また逆転してしまって、困ったもんだ。
by girlfrombackthen | 2009-04-26 18:33 | The Socialite
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