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Crisis as Fashion: 新型インフル・パニックからファッション哲学へ

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アメリカのデザイナー、イリナ・ブロックが手がける「ファッション外科手術用マスク」。「デザインのパワーで豚インフルエンザと闘う」というおかしな広告文句を疑問に思いながら、朝、大学の病院へ向かう。今日は新型インフル騒ぎのお話。

ニューヨーク大学の学生保健センターは設備が充実しているため、万が一何かあっても安心なのだが、ごく普通の風邪とか怪我だとアポを取るのが大変。インターネットで予約するシステムに最近なってからは、深夜0時まわってからその日のアポを入れるという決まりなので、早朝の人気な時間帯(学生だって授業やバイトで日中は忙しいですから)に診てもらいたい場合は、すぐ売切れてしまう人気バンドのコンサートチケットをオンラインで狙うような感覚で12時きっかりに予約しないといけないのだ。病人にそんな遅くまでパソコンの前でスタンバイさせないでよ。

火曜の夜あたりから体調が優れず、昨夜は頑張って12時まで起きていたのだが、ウェブサイトにいくとオンラインの受付は現在行っていません、と書かれている。今日はどうせキャンパスに用事があったので、生ぬるい雨の中病院に行くと待合室が学生で溢れかえっている。しかも皆咳をしている。ちょっとした風邪で、インフルエンザだ!とパニックになっている学生が多いと見た(自分も実はそうだった)。こんな所でいつまでも待っていたら別の病気を拾ってきそうで怖いから、諦める。これはもう気合で治すしかないなと決意。

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メキシコ市の空港で働く女性は自分でマスクをお洒落にしてみた。ロイター通信・テレグラフ

雑用で大学の建物を回っていると、新型インフルに関する情報や健康でいるアドバイスなど、所々にパンフレットやポスターがあるのに気が付く。どれどれーと見てみるが、咳をするときは手じゃなくてティッシュか上腕で口を隠すこととか、手は頻繁に洗うこととか、病気になったら授業や仕事は休むこととか、常識的な言葉が並べられてるだけであまり参考にならず。

夕立に遭い、図書館で雨宿り。パソコン室に座っていると、隣の男性が咳をしていて、しかもスペイン語で「やんなっちゃうなぁ」とか「なんだこりゃ」とか独り言をブツブツ言っている。この人まさかメキシコから来たんじゃ…なんて疑心暗鬼になっている自分が情けない。

しかし、金融システムの溶解にせよ、インフルエンザの世界的大流行の恐怖にせよ、どんなパニックでもファッション哲学にしてしまうのがニューヨークのオカシイというか、恐ろしいというか、とにかく驚かされるところ。不景気を英語で "recession" というが、"fashionista" (ファッショニスタ)にかけて、"recessionista" という言葉が誕生したかと思えば(スタイリッシュに節約するのがマンハッタン流なんですって)、昨年11月、金融危機について "You never want a serious crisis to go to waste," 「決して危機を無駄にしてはいけない」と述べたホワイトハウス主席補佐官のラーム・エマニュエルの発言を髣髴させるように、最近のファッション業界にも新型インフル騒ぎにあやかって利益を生み出そうとする動きが見える。それで登場したのが、ファッション外科手術用マスク。

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日本人のデザイナー、吉田依子のマスクもニューヨークで話題になる(上はサイのマスク)。さらにアメリカン・アパレルまでが、インフル対策を謳って「ヒゲ・マスク」を売り出している。ちびヒゲ、大ヒゲ(?)と二種類のデザインがあるようだが、メキシコ市で通勤中の人間が、自分で動物だの笑顔だのを描いたマスクを着用しているのはまだ普通だとしても、ここまでくると馬鹿馬鹿しくなってくる。ある時点で、危機感はそっちのけでヒップスター文化万歳!になっちゃうのが本当に不思議。何かあるとすぐ騒ぐアメリカ、なおかつ頑張っちゃうアメリカ、そして危機をパーティーに変身させてしまうニューヨーク。まあ、たくましい国ですよね。

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帰りがけにキャンパスでバイト中の友達Pちゃんとコーヒー休憩。新規学卒労働市場の話になる。ジャーナリズムと南米文化学専攻の彼女は、卒業後の仕事探しで悩んでいる。不景気の中、しかも私と同じ学生ビザでアメリカ滞在なので、就職活動はやはり困難。何週間か前、カリフォルニア州サンディエゴの小さな新聞社からインターンシップのオファーがあったらしいが、熟考の末、けっきょくニューヨークに残ることにしたようだ。確かに西海岸へ引っ越してまで引き受けるインターンシップではない。新聞事業は王者のニューヨークタイムズでさえ今大変だから、本当に困ったねえ、という深刻な世間話。また、ニューズウィーク誌でインターン中の友達は、予算削減のため名刺を作らなくなったという。いやしかし、名刺はレポーターにとって必需品じゃないだろうか。社内で紙コップを廃止するとか、ペンは持参にするとかならまだしも、インタビューをした際に、「じゃあこの紙切れに名前と番号を書いておきますから!」なんて格好が付かないよ。

家に帰ると、一年近く前にユニオンスクエアのファーマーズ・マーケットで買ったバジルが花を咲かせている。冬の間は何度か死なせそうになったけど、よく頑張ってくれたね。

雨だとせっかくの金曜日でも出かけられないなぁ。それより早く体調を治さねば。
by girlfrombackthen | 2009-05-02 11:59 | The Aesthetic
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