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Art & Design: MOMA|キッペンバーガーのポストモダンって何?

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ドイツ人アーティストMartin Kippenberger の作品がMOMAにやってきている。

アーティストらしく、アルコール、野心、強迫的社交性に打ち砕かれ、1997年に44歳という若さで死んでいるキッペンバーガー。彼がアートシーンにたどり着いたころには、20世紀後期のアートを象徴するポップ、ミニマリズム、コンセプチュアリズム、ネオ印象派はすでに「古い」と感じられた。共産主義や社会主義などのイデオロギー、そして1960年代のユートピア的理想主義も、過ぎし時のものとなっていた。残されたものは、昔キラキラしていたこういったスタイルや考えが蒸発してしまった後のかすかな残留物、といったところだろうか。

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その bits and pieces、残り物を断片的にポストモダンで新しいアートに仕立て上げるのが自分の使命と感じていた鬼才キッペンバーガー。何かに駆り立てられるかのように、ちぐはぐな数々のアートフォームを占有したキッペンバーガーの作品には、一見したところ、1960~1970年代ヨーロッパのまだ快活で不注意な消費者主義を思わせるような過度さえ感じる。絵画、写真、プリント、ポスター、本、スケッチ、彫像、いずれにせよ、とにかくたくさんスペースを食う、大量な「物」を集めただけのような作品かもしれないが、それは時代の流れ、そして彼自身の強迫的な創造的活動を反映している。"The Happy End of Franz Kafka's 'Amerika'" など、MOMAのアトリウム全体を使った作品は、時間をかけてじっくり研究してみたい。

キッペンバーガーのアートは大変興味深いものだが、MOMAの "Martin Kippenberger: The Problem Perspective" と題された回顧展は、より広範な問題を提起しているように思える。それは「アート」自体の problem perspective 、アートは果たして時代的、周期的なパラダイムとして考えて良いものだろうか。ポストモダンって、何だろう。レビューなどでよく使われる言葉だが、座ってじっくり考えてみると、定義するのはとても難しい。たとえば、キッペンバーガーの "Spider-Man Studio" を見て、どうして「これはポストモダンだ」と感じるのだろう。

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ポストモダンという概念を解釈する方法は、大きく二つに分かれると最近の New Yorker に面白い記事があった。それはモダニズムという概念が生まれ、そして過ぎ去り、もうモダニズムには戻れない、という解釈。これ以降のアートは全てモダニズムの後に来た「違うもの」として捉えられる。もうひとつの方法は、モダニズムに到達してしまった以上、これ以降のアートは全てモダニズム!という考え方。つまり、モダニズムが「勝って」status quo になったという解釈。

私は漠然とした美術史の知識しかないけれど、どちらにしても、どこか納得いかない。現代のアートは、モダニズムのスクールから完全に切り離されているわけでもなく(ピリオド・パラダイム的な考えは避けたい)、全てモダンなアートで統一されてしまった世界もどこか乏しい。キッペンバーガーを見ると、モダニズムが染み渡っているにも関わらず、新鮮さがある。現代アートは、モダニズムと異なり過去との決別を狙うのではなく、過去の美術を取り入れながらも再定義し続ける、見直しを迫る可変性の高いプロセスとして考えたい。樹上性プロセスではなく、根茎形成のように、横の関係で色々なアートフォームに結びつくプロセス、それがポストモダンなのではないだろうか。

そんなことを頭に置き、キッペンバーガーの回顧展を訪れたい。

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"Martin Kippenberger: The Problem Perspective." MOMA 3月1日~5月11日。
by girlfrombackthen | 2009-03-09 07:25 | The Aesthetic
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